そもそも「演奏」とは何なのでしょう?
芸術活動は、創作と享受から成り立ちますが、音楽においては中間に、楽曲を音楽として時間的に実現するために介在する行為が演奏と定義されているようです。
即ち
・物理的には、音楽を、音響を通して時間的に現実化する行為
・芸術的には、作品の芸術性を、正しく再現すること
ということであり、そのためには
・楽譜を音として存在させるための技術の習得
・作品を解釈できる知識の集積
という行為を積み重ねなくてはいけません。
但し、現代の聴衆の時代様式への順応力の限界も知っておかなければいけない
演奏力の向上のために
◇演奏力とは?
・物理的なテクニック=指の動く速さ・粒を揃えられること・音を保持できること
・表現力に関するテクニック=AT・IT・HT・Exp.Ped.x2
◇実現するためには?
・姿勢=正しい座り方と位置(頭の位置)・腕と掌の位置・左右の手の在処の違い
・運指=正しい運指に関する研究・手首の移動とそのための柔軟性・指と鍵盤の接地面の広さ
◇表現力とは?
・歌えること=神経を歌うべきパートに集中出来る環境を整える(テクニックの確保)
・音楽を把握する力=クラシックであれば様式や楽式、ポップスであればジャンルと構成
・音色ごとの奏法=生の楽器を模倣しているからにはその実際の奏法を知り、それをエレクトーンの鍵盤上でどう再現するか、研究する
個別のテクニックの習得について
◇AT・IT・HT→それぞれ鍵盤の特性を知った上で練習する
・AT=音が変わっても変化は持続されなければならない(2㎏までしか負荷を認知しない)
・IT=タンギング奏法はスタッカートから入る(鍵盤の動いた速度を感知する)
・HT=タッチレスポンスは全ての鍵盤に一様に掛かってしまうので隣の鍵盤を利用する
◇ベーストレーニング→個別の練習は必要(足と脚の使い方を意識する)
・速さ・なめらかさ・アクセント→トゥとヒールの使用を練習する
・運動性の向上→膝を中心として振り子的に使う
◇身体の使い方→脱力と柔軟性を身につける
・肩=上げない 肘=脇に固定しない 手首=下げない 掌=潰さない 指=反らさない
・指の構えに対する注意=鍵盤に対していつも平行に・点で捕らえる・掌を広げすぎない
鍵盤への力のかけ方も工夫する 向こうに・手前に・縦に・横に
・上半身を手の上に被せず、腕の重みで演奏するように心がける
◇身体能力の向上→筋力
・深部筋(コアマッスル)=特に脊柱起立筋・多裂筋(背骨の横にある筋肉)が弱いと、背が高く足で身体を支えられないエレクトーンの椅子に長時間座ることが出来ない またこの筋肉が弱いとExp.Ped.を使いこなすことが出来ない
・広背筋=ATを使いこなすために必要 姿勢の維持にも関わる
・上腕二頭筋=AT・HTを使いこなすために必要
・母指内転筋・虫様筋(2~4指)・短小子屈筋=指の内側の筋肉は指の「速さ」と「粒揃え」またATを使い切るために必要
・逆に三角筋、胸鎖乳突筋、上腕三頭筋に不必要な力を入れると、身体が自由に使えなくなる
選曲
◇クラシック・課題曲
・曲の長さや譜面で選ばず、自分の苦手なテクニックが入っていないか、弾きやすいテンポ・拍子の曲であるか充分考え、練習にどれくらい時間が掛かっても、本番に安定して弾けるものを選択する
・この曲のここだけは、という部分は確実に間違えないようになるまで練習する(
◇自由曲
・ジャンルが偏らないように
・曲は試験の科目中、唯一練習していけるもの、自分の持っているテクニック・ノリにあった曲を、しかし偏らないように選んで練習することが大事
・4曲だけ弾いてそれを持って行くのはどうだろう? 自分が安定して弾けるものはたくさん弾いてみないと見つからない
◇曲全般
・目で指を運ぶのでなく、指の幅で運べる指使いを考える
・最後までメロディを頭の中で追いながら弾けるようになるまで、それを邪魔していると思われる、テクニック的に問題がある箇所を繰り返し練習する
・右手だけ録音してそれに合わせて伴奏を弾いてみる、またその逆をやってみる あえてバランス悪く設定した音色で弾いて、普段弾きながら聴けていないパートを意識するのも必要
・一か八かはほぼ自滅すると思って良い 練習で出来ないことが本番で出来るわけがない
・自分は誤魔化せない 恐いと思うところが残っていると必ず失敗する
・間違えないためには練習においても「間違えない」こと→ゆっくり弾くことも大事
・しかしゆっくり弾きすぎると本来のテンポで不可能な運指などの癖がつくので注意がいる
・安定させる一つの手だては暗譜にある
・最後は練習量だけが自分を支えてくれる自信になる
・試験官は選曲そのものも見ている
・本番はミスの数より音楽性を大事にすることを意識する
◇G4編曲
・ポップス調に編曲するのなら、即興の延長上にあると考える この場合前回の資料にあるように、ジャンル・テンポ・使用する音色など、出来るだけ「本物」に近づけられるように工夫する
※既成譜を参考にするのも良いが、特徴的すぎる編曲を雛形にするとただのマネになってしまうので注意!
・クラシック調に編曲するのは出題の仕方からすると難しい 可能性を探るなら、変奏曲風といったところだろうか
・全くのオリジナルアレンジも可能 だがせっかくなら勉強したことを活かしてみる方が良いと思う
・どの場合も4級としての演奏テクニックが盛り込まれるように
◇G3作曲
・編曲の延長上にある そもそもG4に編曲が盛り込まれたのは、G3でいきなり作曲をするのは難しいと判断されたから
・この際なのでポップス・クラシックなど目標を定めて一つのジャンルを掘り下げ、自分のものに出来ると良いと思う
・もちろん3級としての演奏テクニックが盛り込まれるように
◇レジストについて
・他人の作ったレジストである場合が多いが、内容を把握すること+自分が弾きやすく変えることが大事
・リズムの入っていない楽譜にリズムをつけても良いが、楽譜のノリとかけ離れないこと 細かく打ち込みすぎるとずれたとき悪目立ちする(星に踊る天使たち・逃げろハムスター)
◇総括・講師としての演奏
・聞いて貰う立場から、聴かせる立場へ変わっていなければならないことを自覚する
間違えないだけの演奏では仕事として成立しない
・先生であること=幅広いジャンルの音楽知識とそれを弾きこなせる演奏力があること
・客観性を養うこと
・自分も苦労してみよう 弾けるはず、と思うものが結構難しい
・読譜ではなく、弾き方を教えられる講師になろう(評論家、感想を述べる聴衆ではない)
・スケールとカデンツの練習は、曲にも活かされる 全調に挑戦してみよう
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