お尋ねの「移調奏」ですが、幾つか原因が考えられますので、ご自分がどこを苦手としているか当てはめて読んでいただければ、と思います。
①ピアノでの受験だということ
当たり前ですが、ピアノは鍵盤が一つですから、88鍵の上でメロディ、ハーモニー、ベースを弾きます。この横に広い「視野」を持つことに不慣れだと、手を見ずに楽譜を見ながら演奏することがとても負担に感じられます。
加えて左手小指にベースラインを持ってくる形での伴奏も、普段エレクトーンを弾いている方は苦手にされている人が多い気がしますね。
これを解決するためには、ピアノの初見練習書などを、出来るだけ手元を見ないで弾くこと、またベースラインを含む左手だけのカデンツを色々な調で弾けるようにすることが大事だと思います。
②1回目に弾くときに度数(ⅠⅣⅤなど)を考えていない
移調する、というのは楽譜を「2度上・下に読み替える」ことを指しているのではありません。当たり前ですが「原曲を指定された他の調で弾く」ことを求められているのです。
ですから例えばニ長調の問題の冒頭の和音がレ・ファ♯・ラ(Ⅰ)でこれを長2度下げると、ハ長調のⅠド・ミ・ソになるわけです。
この予見(一回目に弾くこと)が出来ていれば、完全5度下げて、といわれても「ト長調のⅠ度で弾けばいいのだから、ソ・シ・レだな」とわかるわけですね。
またこの度数がわかれば例えばⅠ2 がくれば次は必ずⅤ 7が来るわけですから、移調先の調のカデンツの練習が足りていれば、手が考えるより先に動いてくれるハズです。
③弾いているところより先の譜面を読むことが出来ない
前の二つは主に伴奏に関わる事柄でしたが、これはメロディ、伴奏、双方に関わることです。
実践的なお話になりますが、大抵の移調問題は4小節が2段ある8小節のもので、受験者の多くが躓く(つまづく)のが、段が変わる5小節目なのです。
予見のとき、4小節の終わりの音から5小節目のはじめの音は、何度離れた音に飛ぶのか?同じ音なのか?隣の音なのか?を弾きながら視線を先に送り確認しておくと、ずいぶん楽にならないでしょうか?
もちろん、この場所に限らず、いざ移調先の調で弾き始めたら、せめて4拍子なら2拍先くらいを目で追えるといいですね。
それから最後にもう一つ。移調をしても手の形は変わらない、ということを覚えておくと便利ですよ。
ハ長調で伴奏・Ⅴ 7シ・ファ・ソと弾いたところは、例えばニ長調ではド♯・ソ・ラ、ト長調ではファ♯・ド・レ…左手のフォームは黒鍵の位置を除いて変わらないでしょう?
原調の演奏のミスは採点には入らないとはいえ、間違って弾いてしまった箇所は移調先でも間違うことが多いですから、予見に相当する1回目の演奏を、少しゆっくり目に丁寧に正しい音で弾くことを心がけてみてくださいね!
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